島を旅立つ君たちへ

島を旅立つ君たちへvol.26 石垣仁さんインタビュー

石垣仁さん 仕事論

そう語るのは東京・代官山でフレンチレストラン「Beacha」のオーナーシェフをされている石垣仁さん。

西表島の大自然の中に育ち、ミュージシャンの夢を抱いて上京したのち料理の世界へ足を踏み入れていく中で得られた仕事論、今後の夢、次世代へのメッセージを教えていただきました。

 

ミュージシャン志望から料理の道へ

石垣仁さん

 

―現在のお仕事について教えてください。

2020年秋に東京・代官山にオープンするフレンチレストランのオーナー兼シェフをしています。

「気軽に楽しめる大人のフレンチ」をコンセプトに石垣牛などのこだわりの沖縄直送の食材に加え、旬な厳選食材を揃えて皆様の癒しの空間にできればと考えております。

―沖縄で過ごした日々について教えてください。

西表島の大自然に囲まれて育ちました。父が漁師をしていて小学生の頃は網上げを手伝ってから登校していました。

父は冬場は山に入ってイノシシ狩りをする猟師をしていたので小さい頃から海や山でとれた新鮮な食材ばかり食べていましたね。

釣り竿と醤油だけあればもう夕飯のおかずに。それぐらい山河の幸に恵まれた島でしたので冷凍食品を扱う店も無かったと思います。

高校からは実家を離れて石垣島の八重山高校に進学しました。初の一人暮らしで掃除や洗濯食事など身の回りの事を自分でするようになって改めて母親の有難みを実感しました。

学校生活では高校2年の時に長崎から転校してきた桃原君という同級生と仲良くなってよく一緒に遊んでいました。馬が合うというか物の考え方や感覚が合うんでしょうね。その桃原君とはのち仕事でも繋がることになります。

高校卒業後は名古屋にあるギターを作る専門学校を経てミュージシャンを目指すために東京に移り住みました。桃原君が東京にいたことも大きかったです。

―東京ではどの様な暮らしをしてきましたか?

ミュージシャンとしての活動を続けていましたが、このまま続けていても芽が出ないと判断して別の道に行くことに決めました。

音楽活動をしていた時には舞台セットも自作するなど自分の手で何かを作ることが好きでしたし、沖縄料理屋でアルバイトをしていた時に調理をしていた経験から飲食の道を選びました。

西表島の新鮮な食材で磨かれた自分の味覚もその後押しになったと思います。

たまたま一緒に沖縄料理屋をやらないか?と声をかけてくれた友人がいたので28歳の時に東京都狛江市に店を出しました。

暫くは共同経営者という形でメニュー作成や店の運営手法、コスト感覚など、トータルで飲食店を運営する知識を学べたことは良かったのですが、友人とはしばしば考え方を巡りぶつかることがあり残念ながら喧嘩別れをする形で店を離れました。

 

フレンチの師匠からの言葉

石垣仁さん

 

―そこからどの様な転機が訪れたのでしょうか?

異なるジャンルの料理を勉強したかったので伝手をたどって都内の2つ星レストランなどを歴任された師匠の元で3年間フレンチを学ばせてもらいました。

師匠は厳しい方でしたが24時間365日料理の事を考えていて、余った食材を破棄する時には涙を流すぐらい料理に深い愛情を持った方でした。その仕事ぶりを通して初めて本物に触れることができたと思います。

その師匠から「この仕事をするならば作る側か売る側かどっちにするか」と言われた事がありました。要するに料理だけを突き詰めるか、またはいかに売れる商品を作るか、お前はどうする?という事です。

僕自身では“料理4、売る6”の感覚でいきたいと思いました。その後は独立して狛江市に自分のビストロをオープンして4年間やってきましたが、師匠と出会ったからこそ料理だけではない俯瞰の視点を養う事ができたと思います。

―2020年秋からは新規店舗をオープンされます。

これも不思議な縁で、八重山高校時代に親友となった桃原君が関わっています。

桃原君は今は石垣島在住ですが飲食業を始め多角経営で成功している社長で、彼が「代官山で沖縄の食材を使ったフレンチをやる。出資するので一緒にやろう」と声をかけてくれて、狛江の店を閉めて代官山で勝負することを決めました。

僕もデザイン段階から関わって店の名前を「Beacha(ビーチャ)」にしました。八重山地方の方言で“酔っ払い”を意味します。

奇抜なスタイルでなくフランス料理の基本を押さえた王道でありながらも堅苦しくないカウンター11席のみのゆったりした空間を目指しました。

 

ステーキ海ぶどう店内

【Beachea HP】 https://beacha-tokyo.com/

 

新型コロナウイルスの影響で依然、飲食業には強い逆風が吹いていますが、外食を求めて徐々に街にも人が戻りつつあります。師匠にはまだまだ届きませんが、手間を惜しまない料理はしみじみとうまいと言わせる自信があります。

 

いつかは西表島で

―今後の目標について教えてください。

沖縄食材は本当に豊富で魅力あるものが揃っているのでフレンチとのコラボレーションをしていきたいですね。料理を通して沖縄に貢献できることはあると思います。

そして55歳になったら西表島に戻って定食屋を開いて自分がこれまで培ってきた料理を地元の人達に食べさせたいです。

暖かい海で育った沖縄の魚は美味しくないという意見も聞きますが、それはその魚に合った調理法を知らないだけできちんと料理すれば世界に通用する味になります。

西表島の子供達に自分の料理を通してその味を覚えてもらって、大人になった時に「俺はガキの頃から最高の味を知っているんだぜ」と言わせたいですね。そうすれば西表島にもこんな世界に誇れるものがあると分かってもらえる。

敢えて都会に出なくても、地元にいながらもビジネスを作ることもできるんだと実感してもらいたいです。

―読者にメッセージをお願いします。

自分は人のご縁に助けられて今があると思っています。月並みですが人を大切にして嘘をつかない。頑張れば見ていてくれる人は必ずいます。

そして何か目標が見つかった時の為に貯金をしておくことです。実績もなく資金が無ければ世間から相手にされません。

目標を立てる事は大事ですが実際にどう動くか?本気の人間は行動が伴い、動くからこそ信用を得ることができると思っています。将来の自分に投資をするという感覚を持ってもらいたいです。

 

石垣仁さん
石垣仁(いしがき・ひとし)

1980年11月13日竹富町西表島生まれ。 八重山高校卒業後、名古屋のギター制作専門学校を経て上京。 沖縄料理屋、フレンチレストランで料理経験を積み、独立。 2020年秋に東京、代官山に「気軽に楽しめる大人のフレンチ」をコンセプトとしたレストラン「Beacha」をオープン。現地直送の石垣牛や季節の旬な食材を用いた王増のフレンチを提供する。 ランチ11:30~14:00(13:30LO) ディナー18:00~24:00[コース18:00~21:00(LO)、アラカルト21:00~23:00(LO)] 休業日:月曜、年末年始 住所:〒150-0034 東京都渋谷区代官山町14-10 Luz代官山 1F

お問い合わせ

【Tel】03-6427-8116

【Mail】beachaipeach@gmail.com

【HP】 https://beacha-tokyo.com/

 

 

平良
石垣さん、お話ありがとうございました!

 

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